発達障害を抱えた私と働く方のための私の案内書
私は発達障害のうち注意欠陥・多動性障害 (ADHD) を抱えている。そのため、平均的な人に比べて様々な特性が異なる。私と働く方はその特性に戸惑うかもしれない。この案内書は、そんな私を理解するためのものであり、私と働くのを少しでも楽にすることを期待するものである。
得意なこと・可能なこと
職務遂行について
興味のあることについては、高い集中力を発揮します。
情報を整理して簡明にまとめることができます。
論理的な文章を書くことができます。
口頭で、物事を分かりやすく説明することができます。
業務上必要な報告・連絡・相談を行えます。
締切を守ります。守れそうになければ、十分に対策が可能なうちに報告します。
仕事中に不機嫌でいることはありません。
守秘義務は守っており、当然家族にも秘密を話すことはありません。
一般的に戦略上秘密にしておくべき情報の区別は付きますし、秘密にしておくことができます。
対人面について
人並みの礼儀はわきまえています。
挨拶はできます。
身だしなみは適切です。
初対面の人でも問題なく話すことができます。むしろ、初対面の人と話すのは大好きです。
人が話している時は、その話を最後まで聞くことができます。
世間話は嫌いですしストレスになりますが、できます。
素直であり、厳しい指摘に対しても理解して改善に繋げるようにしています。
悪口は言いません。
愚痴は言いません。不満に思っていることについては、可能な限り意見を伝えるなど、状況を改善する努力をします。
嘘は付けませんが、本音を隠しておくことはできます。
苦手なこと・困難なこと
職務遂行について
集中力を制御することは苦手です。一度集中すると他のことをすることが困難だったり、忘れたりします。食事さえも忘れることがあります。
対策: 急いでしなければならないことを私に依頼する場合は、依頼時にその旨を強く表現するとともに、依頼後は必ず催促をしてください。
興味が持てないことについては、なかなか取り掛かれず、集中力にも欠けます。
対策: 私が興味を持てないようなら、その仕事を他の人に依頼することを検討してください。どうしても私が担当する必要があれば、できるだけ興味を持てるように工夫をしてください。
業務に優先順位を付けることはできますが、優先順位が高くとも興味が持てないことにはなかなか取り掛かれません。
対策: 上と同じです。
いわゆる単純作業をしていると、すぐに眠くなります。
対策: 私に単純作業をさせないでください。どうしても私が担当する必要があれば、作業速度が平均よりも何倍も遅いことを覚悟してください。眠気覚ましのためにお茶をたくさん飲むなどの工夫をしますが、私の眠気は大変強力です。
臨機応変に対応することは苦手です。
対策: 高度に臨機応変さが要求される仕事を私にさせないでください。そうでない仕事なら、少し考える時間をくだされば、対応することができます。
調子の波が極端なので、毎日・毎週同じペースで仕事をすることは苦手です。
対策: 私の仕事の進捗が思わしくない時も、悪く思わないでください。月単位で見れば概ね帳尻が合っています。
昼休みなど、特定の時刻・時間に休むのは苦痛です。
対策: 私が勝手な時刻に好きなだけ休んでいても、注意しないでください。仕事をサボることはありません。
しょっちゅうトイレに行きます。眠気覚ましのためにお茶を飲んでいるからです。
対策: 私が度々離席しても、注意しないでください。仕事をサボることはありません。
体調管理は十分に行っており常に最良の状態を保っていますので、体調管理を求めないでください。ストレスを感じて体調が悪くなります。
対策: 私の状態が悪く見えても、体調管理を求めないでください。その状態がその時の最良の状態であり、体調管理を求めてもそれ以上よい状態にはなりません。
視覚過敏・聴覚過敏・嗅覚過敏などの知覚過敏があり、周りが慌ただしかったり、周りで音がしたり、周りで臭いがしたりすると、集中力が低下するとともに、大きなストレスを感じます。
対策: 視覚過敏については、前左右に高いパーテーションを用意するなど、周りの視覚情報を最大限遮断する環境を用意してください。聴覚過敏については、図書館の閲覧室程度の静粛な空間が理想的で、少しの話し声でも集中力が低下します。ノイズキャンセリングヘッドホンの使用を許可してください。嗅覚過敏については、タバコの臭い(頭痛になります)、そして香水や芳香剤の臭いは、僅かなものであっても苦痛です。できるだけ特定の臭いのない環境を用意してください。また、周りに人がたくさんいると落ち着くことができません。なるべく人がいない場所を用意してください。
急に話しかけられると大変驚きます。
対策: あらかじめ用事があることが分かっていれば、話しかける前に別の手段で予告をしてください。
環境が変化すると大きなストレスを感じます。
対策: どうしても必要であれば環境変化を受け入れますが、例えばオフィスにおけるフリーアドレスのような毎日の極端な環境変化は確実に私の健康を害して、そのうち退職してしまうでしょう。したがって、私には固定の席を用意して、その周囲の環境もなるべく変化させないようにしてください(毎日違う人が近くに座るのを避けるなど)。
いわゆる注意されることは平気ですが、怒られることは苦手で、怒られてばかりいるとそのうち怒られるのを恐れて業務上必要な報告・連絡・相談をしなくなります。
対策: 厳しい指摘をすることはもちろん構いませんが、感情を込めずに必要最小限の時間で行ってください。
不機嫌な人の相手をするのは苦手です。特に上司が不機嫌であれば、そのうち怒られるのを恐れて業務上必要な報告・連絡・相談をしなくなります。
対策: 仕事中に不機嫌でいるのはやめてください。私もそうしています。
一度にたくさんのことに気を配るのは難しいため、電話番をしながら他の仕事に集中することはできません。
対策: 私に電話番をさせるのはやめてください。
口頭のみでの指示は忘れます。
対策: 指示はなるべく口頭と文書の両方で行うか、文書のみで行ってください。Slackのようなチャットが最適です。口頭のみで指示を行う場合は、私にメモを取る十分な時間をください。
私が何かを指示したとしても、私は指示したこと自体を忘れます。
対策: 私が指示したこと自体を忘れていても呆れないでください。あなたを軽く見ているわけではありません。私は自分のために記録を付けるようにしていますが、それでも忘れることがあります。
曖昧な指示を適当に理解することはできません。
対策: 指示は私が納得するまで具体的にしてください。私が曖昧だと感じたら、より具体的にするよう依頼します。
皮肉を言われても、それが皮肉であることを理解できません。
対策: 皮肉ではなく、苦情を率直に言ってください。
本音と建前を使い分けることも、感じ取ることもできません。
対策: 私が率直な物言いをしても悪く思わないでください。あなたを責めているのではありません。私が本音を隠したい時は、何も言いません。私に対して言いたいことがあれば、率直に言ってください。
考え事をしていると、まるで寝ているように見えることがあります。集中力を最大限に高めるために、視覚情報を遮断するために目を閉じて、体の力を抜いてリラックスしているからです。
対策: 私が寝ているように見えても、寝ているとは思わないでください。稀に本当に寝ている時は、寝息を立てています。
対人面について
騒がしい場所は苦手です。
対策: 大規模な懇親会・飲み会などで私が途中で離席したり帰ったりしても、怒らないでください。
一度にたくさんのことに気を配るのは難しいため、飲み会などで他の人のグラスに飲み物がなくなっても気付きません。
対策: 私にお酌をさせたいなら、他の人と話すことはできません。私に他の人と話してほしいなら、お酌をすることはできません。なお、私はそもそもお酌は嫌いで、各自が勝手にするべきだと思っています。
楽しくないのに楽しそうに振る舞うことはできません。
対策: そのような態度に腹を立てない人としか仲良くなれないことをご了承願います。
楽しくてもあまり楽しそうに見えないかもしれません。
対策: 見た目よりも楽しんでいることがしばしばあるので、あまり心配しないでください。本当に楽しくないなら、今度から参加しないでしょう。
世間話はできますが、ストレスを感じるのでなるべくしたくありません。
対策: 世間話が好きな人を引き合わせるのは避けてください。私は自分や相手にとって実があると考える話を好み、世間話には一切価値を感じません。
会話において、しばしば話しすぎます。
対策: 私が話しすぎているようなら、指摘をしてください。
他人の感情を正確に読み取れないことがあります。
対策: もし何か言いたいことがあるなら、言ってください。
お世辞は言えませんし、お世辞を言われてもそれがお世辞であることを理解できません。
対策: お世辞は言いませんが、悪口も言いません(気を遣う相手の場合、悪く思っていても何も言いません)。褒められたら、素直に喜びます。
社交辞令は言いませんし、社交辞令を言われてもそれが社交辞令であることを理解できません。
対策: 「今度食事でも」と言われて私が了承したら、本当に食事に行く計画を立てることを知ってください。
社交辞令は言いませんが、言ったことはすぐに忘れます。
対策: 私が言ったことに乗り気なら、連絡をください。
愚痴は言いませんし、愚痴で盛り上がることはできません。
対策: 私は不満に思っていることについては、可能な限り意見を伝えるなど、状況を改善する努力をします。愚痴を言わないのは、愚痴を言っても状況は改善しませんし、愚痴を言うことに意味を見出せないからです。愚痴で盛り上がるのは構いませんが、私を仲間にするのは諦めてください。